スローガン・運動方針・事業計画

◆スローガン

  1. 2025デフリンピック東京大会に向けて、デフスポーツサポーター制度による資金造成や啓発イベントの開催、国際手話ボランティア養成などを進めよう。
  2. 「東京都手話言語条例」をもとに、東京都と連動して言語としての手話の理解促進と教育における手話言語の活用を進めよう。
  3. ウィズコロナにおける運動を展開し、意思疎通支援事業や電話リレーサービス等を活用した24時間対応の情報支援システムを構築していこう。
  4. 区市の手話言語条例制定や派遣要綱の見直し等により意思疎通支援施策を推進し、地域における情報支援格差の是正を進めよう。
  5. 福祉事業と運動の連携を学習し、派遣と支援の連携などによる総合的な聴覚障害者支援体制を構築しよう。
  6. 震災復興時の支援体制をより充実させ、複合災害でも対応できる具体的な災害対策を地域組織とともに構築しよう。
  7. ブロック担当役員を中心に法人構成員・日聴紙購読者・手話研修センター後援会員・たましろの郷後援会員を増やそう。
  8. 東京のろう教育を考える会の活動を通してろう学校での専門性をさらに高め、ろう児施設「アレーズ秋桜」を支援していこう。
  9. 高齢聴覚障害者が地域で安心して暮らせる社会実現のために、福祉制度学習やニーズ調査をもとに施策プランを具体化していこう。
  10. 私たちの生活と福祉を破壊する核兵器と戦争に反対し、世界平和を追求しよう。

◆運動方針

統一テーマ

「障害者情報アクセシビリティ施策推進法」「東京都手話言語条例」そして「デフリンピック東京」を元にした東京の新しい聴覚障害者施策構築を進めるために本格的な学習活動を行い、デフスポーツ支援活動推進による資金造成に取り組むとともにコロナ禍をものともしない強靱な運動を展開していこう。

1.2025デフリンピック東京大会に向けて、全日ろう連及び東京都とともに準備や資金造成を進めよう。

当連盟と全日ろう連で「デフリンピック2025年東京招致」の特別決議が行われた2018年から4年間にわたって、都や都議会への要望、小池都知事との話し合いや国会議員との交渉などを全日ろう連と共に取り組んできました。
その結果、2022年6月に東京都が招致を認め、9月の国際ろう者スポーツ委員会総会で東京開催が決定しました。
その後、東京都と競技団体や開催会場との話し合いを進め、具体的な内容もほぼ確定しましたが、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会による不祥事が次々に明るみに出たため、大規模なスポーツイベントに対する目が厳しくなり、東京都より「コンプライアンス(法令遵守)のため、デフリンピックガバナンスコード※1の構築がまず先」と言われ、ガバナンスコードの作成やその周知などで大変な状態になりましたが、ようやく準備が整い「デフスポーツサポーター制度」という形でデフスポーツ全体の振興を含めた資金造成運動がこれから始まります。
規模、資金、人材、どれをとってもかつて経験がない大変なイベントです。
しかし、その大変な経験、構築した体制、関わった人材が、これからの日本、そして東京の大いなる飛躍につながるのです。
1991年の世界ろう者会議の東京開催はろう者の文化やアイデンティティを変えました。
2025年の東京デフリンピックは、ろう者だけでなく、広く都民や国民に聴覚障害者や手話の存在を知らしめ、SDGs(持続可能な開発目標)の謳う「誰一人取り残さない共生社会」となるように変えていかねばなりません。そのためにもデフリンピックムーブメント※2等による機運造成活動に取り組むなどの周知活動が肝要になります。
きたるべき未来の共生社会構築のために東京デフリンピック2025を成功させるよう全力をあげて取り組んでいきましょう。
※1「ガバナンス・コード」=組織を統治する指針や行動原則のこと。スポーツ団体等の透明性や公平・公正性を向上させることを目的として作成される規則。
※2「ムーブメント」=ある目的を達成するための動き、流れをなど指す言葉。時計の動きや絵画・彫刻などに表現される躍動感。

2.東京都手話言語条例制定をもとに、言語としての手話の理解促進と教育における手話言語の活用を進めよう。

東京の手話言語条例はオリンピック開会式で無観客、テレビ放送のみになったにもかかわらず、テレビ放送に手話通訳がつかなかったという問題がきっかけとなり、都議会で超会派のワーキングチームが結成され2022年6月の都議会で制定、9月1日に施行されました。
超会派の議員立法となったおかげできちんとした理念や実効性のある内容の条例となりました。補正予算も計上され、リーフレットやポスターが作られたり、本年2月11日には、東京都主催で1000人を超える規模の手話言語フェスinTOKYO2022も開催されました。
しかし、区市の手話言語条例にも言えることですが、条例は制定後にどう施策に結びつけるかが重要です。今後はこの条例が言語としての手話の理解や活用、特に教育面における事業化に結びつくよう都政や議員と引き続き話し合っていく必要があります。
そのために、私たちも言語としての手話についてやろう教育についての専門的な知識の学習、そしてどのような施策が良いのかという審議が必要になります。
デフリンピックと手話言語条例という大きな二本の柱、そして2022年5月に制定された障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法をもとに、新しい形のろう運動を展開し、新しい体制を構築し、新たな人材育成、そして都政との新たな連携強化を進めていきましょう。

3.ウィズコロナ社会における運動を展開し、意思疎通支援事業や電話リレーサービス等を活用した新しい情報支援システムを構築していこう。

「公益社団法人東京聴覚障害者総合支援機構」の公益目的事業を充実すべく自立支援センターでは2018年4月から就労移行支援事業所「RONAスクール」を開所、その翌年から指定特定相談支援事業所「RONAプラン」も開始し、通所者も一時は定員になるほど増加し、就労に結びつく人も多く出て順調に運営されています。
「就労移行支援事業」は就労に向けて必要なことを学ぶだけでなく、職場定着支援のほか、将来的には就労継続支援B型事業所の運営などさまざまな職業支援に結びつけられる可能性があります。
手話通訳等派遣センターやたましろの郷を運営する社会福祉法人東京聴覚障害者福祉事業協会や東京都の情報提供施設として認可されている社会福祉法人聴力障害者情報文化センターも事業の見直しを行っており、社会福祉法人制度改革施策などで運営のあり方が変わってきています。今後手話言語条例や情報アクセシビリティ法による新規事業が開始されることが予想されますので、機を逃さずにより効率的で当事者主体の事業が実施できるよう交渉していく必要があります。
入所施設も東京聴覚障害者支援センター(旧・東京都ろうあ者更生寮)は建築50年以上が経ち建て替えることが決定し、新しいろう児施設「アレーズ秋桜」が昨年開所しました。しかし、こういった入所施設も入所期間が過ぎた入所者をどう支援するかが課題となっており、グループホームのような継続できる入所施設の増設が必要になっています。
これらの施設再建の動きにうまく乗ればバラバラだった東京の聴覚障害者施設や施策が何らかの形でまとめられる可能性がありますし、それを通してろう高齢者施設建設等の可能性も出てくるかもしれません。
そのために、福祉施策や施設建設や運営についての具体的な学習が必要ということで数年前から取り組んでいます。「東京の聴覚障害団体は運動の力はあるが福祉についての勉強が足りない」という声があります。振り返ってみると自立支援センターを除く都内聴覚障害者関係施設や事業所の運営は保護者や支援者などの聞こえる人中心で行われてきています。
当事者である私たちがこれらの運営に関わるために、福祉制度の学習に力をいれることとそれを担う人材の発掘と育成が必要です。全日ろう連が作成した「地域に生きる拠点を創る」などを使用した学習会などを行う方針を数年前から計画していますが、ちょうどコロナ禍と重なりなかなか学習会が開催できないでいました。しかし、対面での集会が開始されるようになり、またオンライン学習会も定着してきましたので、2023年度は仕切り直して学習活動を進めていきます。
福祉施策は聴覚障害者だけでなく、全ての障害者が対象ですので、聴覚障害者以外の障害者のことも学習する必要があります。私たちが取り組んでいる「優性保護法」の問題も多くの障害者が被害者になっており、その根底にあるのは『健常者=優性、障害者=劣性』『働かない者は食うべからず』といった障害者や社会的弱者に対する差別意識です。これは私たちにとっても同じであり、ろう学校での口話法偏重時代に手話を禁止され、ことばを奪われたことともつながっています。そういうことを学習することを通して福祉制度についての理解を深め、他の障害者との協力関係を構築していくことが新しい運動の道しるべになるのではないでしょうか。

5.ブロック制の活用、防災への取り組み、高齢者支援、教育支援などを推進しよう。

東西南北4ブロック推薦による役員体制が始まってから4期8年以上が経過しました。ブロック担当が会員拡大や後援会支援などの役割を分担したり会員の声を聞く会を開催するなど取り組んで来ましたが、コロナ禍の影響やデフリンピックに注力したことなどもあり効果がまだあまり見られない状況です。
ブロック体制が機能し、ブロック選出役員が活発に取り組むことが、地域の運動や東京の聴覚障害者福祉の発展につながることをさらに理解していただき、加盟全区市協会が積極的にブロック活動に参加するようお願いしたいと思います。
前項の運動と福祉施策の連携を実現するためには、ブロックの中での学習も重要になります。例えばブロック毎の高齢ろう者グループホームが建設できれば、それらの事業に従事する人材が増加することになります。
京都、大阪、埼玉、千葉などの取り組みを参考に、福祉施策による事業従事者のろう運動への関わり方を見直し、聴覚障害者福祉事業と運動が一体となった体制を構築するとともに、デフリンピックに向けての準備を進めるために専従職員を雇用することになりますが、デフリンピック終了後にこれらの人材が福祉施設や事業所の職員として活躍できるよう、施設・事業所建設運動や連携をデフリンピックの準備と平行して進める必要があります。
そうすれば必然的に運動のための人材も充実することになりますので、当連盟事務局長をはじめとする高齢化した団体・施設の管理責任者の後任確保などが進むことが期待できます。
手話言語条例制定により教育機関との関係も深まるでしょう。アレーズ秋桜もろう児入所だけでなく地域支援も計画しています。
施設・事業所の人材が増えることで、非常時の支援体制も構築しやすくなると思われ、教育支援・高齢者支援・地域支援・災害支援などに結びつく取り組みに重点を置いてこれからの運動を進めていきましょう。

おわりに

2022年はデフリンピック東京招致と東京都手話言語条例制定という大きな悲願が実現しました。しかし、繰り返しますが、東京都や地域の施策、そして私たちのろう運動が変わるかどうかはこれからの取り組みにかかっています。
2023年度は歴史に残るこの出来事が名ばかりにならないよう、そしてSDGsが掲げる「誰一人取り残さない共生社会」の実現のために、これからの東京のろう運動はどうあるべきかを本気になって考え、実現に向けての具体的な学習と運動を展開していきましょう。

◆事業計画

2023年度事業計画