障害者自立支援法案の「応益負担」について再検討を求めます

衆議院解散により「障害者自立支援法案」が廃案となりましたが、厚生労働省はほとんど手直ししないままに、来る特別国会に再提案する予定でいます。
 本法案は、利用者の応益負担(定率負担)制度をその基盤としており、とうてい、障害者の社会参加を国民の基本的人権とみなしているとは言いがたいものです。
 そもそも障害者が自立した生活をおくることは障害者個々の「益」ではなく、国民としての権利であり、利用に際して負担を強いられるものでは決してありません。
 法案審議にあたり、東京都福祉保健局から本年5月に出された「障害保健福祉施策の改革(障害者自立支援法案)に関する主な論点と東京都の見解」の中でも『今回の制度改革が国民的議論と合意形成に基づき実施されるべき』『制度の詳細が示されていないため、現在示されている施行スケジュールでは、自治体の準備や住民への周知の期間が確保されない』『改革の影響は極めて大きいため、障害者等の意見を聴くとともに、都や区市町村とも十分な意見交換を行い、準備期間を確保した上で、円滑な制度導入を図ること』と示されているにもかかわらず、また多くの障害者や関係者が繰り返し求めてきた『徹底かつ慎重な審議をして欲しい』という声にも耳を傾けることなく、進められています。
 
1.法案は、当事者の所得保障について十分に検討しないまま、福祉・医療サービスの利用に定率の負担を導入しており、自立のためにさまざまな福祉サービスを必要とする障害の重い人ほど負担が重くなるという基本的な考えを改めていません。
 何よりも聴覚障害者にとっては、基本的人権を保障するものであるコミュニケーション支援に「応益(定率)負担」が持ち込まれるということは、人間としての当然の権利を金で買ということになります。また、コミュニケーションは相互にとって必要なものであり、障害者だけが「益」を得るわけではないと考えます。

2.コミュニケーション支援など地域生活支援事業にかかる財源は裁量的経費とされており、地域においての財源及び人材確保の見通しが不十分なままでは、基本的人権としてのコミュニケーションが保障されなくなることが危惧されます。

3.法案の重要な部分は全て政省令にゆだねられており、コミュニケーション支援事業のみならず、ほとんどの施策のあり方が明確にされていないなどの問題を抱えたままです。

4.従来の障害の認定基準のままでは、障害者手帳を交付してもらえない難聴者が要約筆記通訳を派遣してもらえなくなるなど、全ての聴覚障害者が必要なサービスを利用できる仕組みになっていません。

5.東京都でも法案や国政方針の影響を受け、都レベルのコミュニケーション支援事業を区市町村に降ろす考えが進められていますが、これは移動に障害を持たない聴覚障害者にとって、広域派遣を制限されるものであり、かつ、東京都が担ってきたレベルの高い通訳を維持できなくなることが懸念されております。

6.また、施設利用者にとっても、食費・日用品費・医療費も個人負担となるため、都内の聴覚障害関係者が10年以上の努力の末にようやく建設された、ろう重複障害者入所授産施設「たましろの郷」の入所者にも大きな負担増となり、入所者の所得保障がないままでは、退所を余儀なくされたり、施設運営を圧迫することが予想されております。

 以上を踏まえ、障害を持つ国民の基本的人権擁護を尊重し、当事者が安心できる本当の意味での「障害者自立支援法」となるように具体的施策を含めて十分な審議を行うことと、今後も引き続き当事者団体の意見を十分に組み入れて進めることについて、東京都議会からも国会に意見を出していただくとともに、導入にあたって、東京や区市における障害者の福祉や社会参加が後退することのないよう、ご理解とご支援をいただきたく、東京の聴覚障害者及びコミュニケーション支援事業に関わる全ての者を代表してお願い申し上げます。

             聴覚障害者「自立支援法案」対策東京本部      
              (構 成)                   
              ・社団法人東京都聴覚障害者連盟        
              ・特定非営利活動法人東京都中途失聴・難聴者協会
              ・東京都手話通訳問題研究会          
              ・東京都登録要約筆記者の会          
              ・東京都手話サークル連絡協議会        
              ・全国要約筆記問題研究会東京支部       
              ・東京都要約筆記サークル連絡会

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