障害者福祉施策に関する公開質問状とその回答(2024年7月都知事選直前実施)

2024年7月7日投票予定の東京都知事選挙を前に、聴覚障害者制度改革推進東京本部として、立候補予定者・各政党に対して、私たちきこえない人、きこえにくい人ちの関心が高いテーマについてお考えをお尋ねするアンケートを実施しました。
以下に立候補予定者・各政党にお送りした依頼文、アンケート本文、回答を掲載します。

掲載順は到着順です。回答がなかったところは(未回答)としています。

各党の考え方を理解し、皆様が投票する際の参考としていただければ幸いです。

2024年6月吉日

 

2024年6月吉日

 

東京都知事選挙立候補者 ○○ ○○ 様

                    聴覚障害者制度改革推進東京本部

                    (東京都聴覚障害者福祉対策会議)

                      会 長  粟 野  達 人

 

令和6年度東京都知事選挙立候補予定者・政党に対する聴覚障害者関連政策アンケートのお願いについて

 

 私たち「聴覚障害者制度改革推進東京本部」は、東京都内の聴覚障害当事者とその支援者の7団体によって構成し、聴覚障害者福祉にかかわる施策をより良いものにするべく活動しております。

 さて、7月30日任期満了の東京都知事について、7月7日投開票が予定されています。選挙を前に、当本部では各候補者所属政党のみなさまに、聴覚障害者に対する政見に関するアンケートを実施することにいたしました。

 聞こえる人は、テレビ報道や街頭演説等で立候補予定者の政策や考えを知ることができますが、手話通訳や文字情報の付与が不十分なため、参政権の行使ができません。聴覚障害者のおかれている状況をご理解いただき、私たちの関心が高いテーマについてお考えを伺う下記のアンケートへのご協力をお願いいたします。

ご回答結果(無回答も含め)は告示前に当本部構成団体のホームページ上に掲載させていただきます。

 告示を間近に控えご多忙のおりとは存じますがどうぞよろしくお願い致します。

【アンケート本文】

令和6年度東京都知事選挙立候補予定者・政党に対する聴覚障害者関連政策アンケート

 質問事項

1 情報・コミュニケーション条例、手話言語条例制定について

 私たちは障害者権利条約の理念をもとに、障害者施策に当事者が直接参画できる体制の確立、聴覚障害者においては、情報アクセスとコミュニケーションの権利保障、言語としての手話普及等を実現するため、情報・コミュニケーション法、手話言語法等の法整備を推進し、東京都および区市町村における条例化を求めているところです。

 東京都では202291日に手話言語条例が制定され、国においては「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法案」が20235月25日に施行されています。

 情報・コミュニケーション法や手話言語法の制定及び、東京都における取り組みについて、貴殿はどのようなご見解をお持ちですか。

 2 新型コロナウイルス感染問題を含めた、災害時の聴覚障害者への情報提供について

 災害時やコロナ禍での緊急事態宣言発出で、政府や都知事会見などのテレビ放送やネット動画が増えてきました。これらの多くは住民の安全に関わる重要な情報ですが、音声による情報提供は、字幕がないと聞こえにくい者にはわかりにくく、適切な行動をとることができません。

 また、手話言語が第一言語の聴覚障害者の場合は、文字やテレビ字幕による情報入手も困難です。

 今般、都知事の記者会見ライブ放送、動画の手話、字幕付与が増加していますが、災害時にも同様に手話・字幕付与が必要であり、当事者がこれまで強く求めてきたところです。

 災害時の聴覚障害者支援・対応上、手話通訳と文字による情報保障は不可欠ですが、貴殿はどのようなご見解をお持ちですか。

 

3 東京都の意思疎通支援事業実施について

東京都は、障害者自立支援法施行以後、手話通訳者派遣事業や要約筆記者派遣事業を段階的に廃止し、都民である聴覚障害者を支援する情報保障の制度が後退してしまいました。区市町村主体の派遣制度はありますが、都内の町村では事業実施は自治体の裁量となっており、事業を実施していない自治体もあり、派遣要綱や受け付け方法・条件等もまちまちで、かなり地域格差があります。

平成25年4月に施行された障害者総合支援法で、東京都は広域行事型派遣事業を実施することになり、東京都が広域性・公益性があると判断した一部の会合で派遣制度が復活しています。ですがこの制度でも東京都全域を対象とした会議、行事でないと認められず、社団法人やN P O法人内部の行事や会合などは公益性があると認められないことから、都内の多様な聴覚障害者のグループの活動に情報保障が用意できない状況となっております。

また、聴覚障害者個人の緊急性や専門性に対応した派遣、事業を実施していない区市町村を補完する派遣は、東京都の事業としての実施が必要です。

貴殿は、東京都の必須事業として定められた手話通訳者・要約筆記者派遣事業を、より聴覚障害者のニーズの求めに応じ、専門性や緊急性等、区市町村の事業を補完するための意思疎通支援事業を充実させる考えがありますか。

 

4 選挙時の情報保障について

聴覚障害者の参政権は、十分保障されているとはいえません。
現行の公職選挙法では、街頭演説会等に必要な字幕や手話通訳、要約筆記といった情報保障手段は部分的にしか認められていません。聴覚障害ゆえに不公平な状況にあり、基本的人権が奪われています。

このたびの選挙において、個人演説会、選挙公報など貴殿の政見を訴える場面において、手話通訳、字幕、要約筆記、盲ろう者向け通訳・介助等の、聴覚障害者・盲ろう者に対する情報保障を実施されますか?

5 FAX及びメールによる選挙運動について

平成25年の法改正でインターネットを活用した選挙運動が認められるようになりました。しかし、聴覚障害のある候補者が電話の代わりにFAXで投票依頼をすること、聴覚障害を持つ有権者がメールやFAXで他の有権者に投票依頼することは現在も認められておりません。FAXは印刷した文書図画と同じように見られているようです。聴覚障害者にとって、FAXやメールは選挙運動におけるアクセシビリティとして大変有効であると考えます。

聴覚障害者の選挙運動について、貴殿はどのようなご見解をお持ちですか。

 

6 その他

聴覚障害者福祉施策について、貴殿が特に取組みたいと考えていることをお聞かせください。

 

 以上の内容について、6月19日(告示日前)必着で下記の連絡先にご回答をお願いいたします。

 メールでもFAXでも結構です。

 

                     連絡先  〒150-0011 渋谷区東1−23−3                 東京聴覚障害者自立支援センター

                公益社団法人東京聴覚障害者総合支援機構                 東京都聴覚障害者連盟内

                  聴覚障害者制度改革推進東京本部                 (東京都聴覚障害者福祉対策会議)

                      TEL 03-5464-6055 FAX 03-5464-6057
E-mail office@deaf.tokyo
 

(構成団体)

公益社団法人東京聴覚障害者総合支援機構・東京都聴覚障害者連盟
特定非営利活動法人(認定NPO)東京都中途失聴・難聴者協会
特定非営利活動法人(認定NPO)東京盲ろう者友の会
東京都手話通訳問題研究会
特定非営利活動法人全国要約筆記問題研究会
東京支部東京都手話サークル連絡協議会
東京都要約筆記サークル連絡会

以上

【回答】

●小池百合子

 

東京都東京都聴覚障害者の参政権保障委員会 ご担当者様

 東京都東京都知事選挙に向けた候補者アンケートにつき、下記の通り回答いたします。

小池百合子事務所 

1.

東京都が202291日に施行した「東京都手話言語条例」は、手話は言語であるという認識の下、手話を必要とする人の意思疎通を行う権利が尊重され、安心して生活することができる共生社会の実現を目指す上で、非常に意義のある取組と認識しています。

本条例を踏まえ、これまで、都民の手話への理解を深めるため普及啓発に努めるほか、手話通訳者の養成などに取り組んできました。

手話を必要とする方が手話を用いて意思疎通できるよう、環境整備を更に推し進めることが重要と認識しています。

 

2.

災害発生時には、聴覚障害がある方も含め、障害のある方が適切な行動をとり、避難した場所で適切な支援を受けられるようにすることが重要です。

このため、昨年9月にリニューアルし、都内全世帯に配布した「防災ブック」は、障害のある方にもご活用いただけるよう、例えば、視覚障害者向けに音声で内容を確認できる音声コードを掲載しているほか、聴覚障害者向けに各種問合せ先の竜話番号と併せてメールアドレスを記載するなどの対応も行っています。

また、コロナ禍に感染症の最新情報を動画で発信する「モニタリングレボート」では、手話とともにリアルタイム字幕版の配信を行うなど、聴覚障害者の方も含め、都民の皆様に広く情報が伝わるよう、取り組んできました。

引き統き、アクセシビリティに配慮し、必要な情報が誰にでも伝わるよう、都民の皆様への情報伝達手段の多様化を図っていきます。

 

3.

国の通知は、都道府県の手話通訳者及び要約筆記者の派遣は、原則として市町村が実施し、それが実現出来ない場合に都道府県が派遣事業を実施する必要があるとしています。

東京都は、こうした国の方針等を踏まえ、手話通訳者の派遣を実施しておりますが、事業を取り巻く状況等を確惚しながら、何が出来るかをしっかりと考え抜き、誰もが安心して生活できる共生社会の実現に向け、力を尽くしてまいります。

 

4.

障害をお持ちの方の選挙権の行使に資する情報を提供することは重要です。

私は、会見、HPSNSなど各種媒体における発信に際して、手話・字幕・音声など様々

な手法による情報発信を行うことで、障害のある方への情報保障に配慮しています。

また、東京都選挙管理委員会が管理執行する追挙においては、選挙公報の全文を肉声で収録した音声版選挙のお知らせを作成するとともに、視覚障害者団体が作成した選挙公報を点訳した資料を購入し、区市町村選管等に配布するなどの取組が行われています。

引き続き、障害をお持ちの方に対する情報発信のあり方を、しっかり考えてまいります。

 

5.

公職選挙法は施行から70年が経過し、インターネットの利用解禁など改正が行われてきたが、障害をお持ちの方の政治参加も含め、未だ課題はあると認識しています。

障害の有無を問わず、誰もが民主主義の根幹を為す選挙に参加できる環境を整備することは、我が国の民主主義を守ることと同義と考えます。

引き続き、全ての人が公明かつ適正に選挙に参加できるよう、都としてどういったことが出来るか、真摯に向き合い、考えていきたいと思います。

 

6.

私は、今回の選挙において、「多様な人がもっと!輝く東京へ」を公約の柱の一つに据え、ダイバーシティの推進を一層加速し、障害の有無を問わず、誰もが自分らしく輝ける都市を実現するための施策を提案しています。

具体的には、障害の有無に関わらず共に学ぶインクルーシブ教育推進、ソーシャルファームの更なる加速、就労が困難な方の雇用促進など、障害のある方の生活に寄り添った様々な施策を実行したいと考えています。

また、開催を来年に控えるデフリンピックは、共生社会づくりに貫献する優れた取祖を広めていく好機です。音声情報を文字に変換するスマートグラスなど、聴覚障害や言語の壁を乗り越え、意思疎通を図れるユニバーサルコミュニケーション技術の実装も進めていきます。聴覚障害者の方も含め、誰もが安心して暮らせる社会づくりを進めてまいります。

 

●田母神俊雄

1.

2018年に障害者差別解消条例、2022年に手話言語条例とつづき、東京都は一定の取り組みができていると考える。

 

2.

とくに災害時、限られた情報伝達のなかであらゆる情報(伝達手段)を含めることは現実には難しい。しかし今日の技術革新を活用できれば、発信あるいは受信の側がAIを通じて口話を手話とをシームレスに変換することが可能なのではないか。制度とそれを支える技術(人・モノ)とを整備して、安心できる暮らしの支えを提供したい。

 

3.

意思疎通は暮らしを根底から支えるもので、求めに応じた支援策が必要だ。技術進歩を制度に生かし、例えば手話通訳者が遠隔地からオンラインで参加させるとか、AIの深層学習による手話通訳・要約筆記にも応じられるのではないか。

 

4.

すべての情報発信に手話等の情報保障を施すことは出来ないが、取り組みの必要性は強く認識している。まずは聴覚障害に対する理解向上、認識アップとして2025年に東京で開催されるデフリンピックでその機運を盛り上げたい。

 

5.

現行法が、聴覚障害者の存在を考慮できていない現れと言える。当事者の権利は最大限に保障されるべきであり、法律が追い付いていないなら、法律をよりよく変えなければいけない。法で何かを認めれば、その裏技のようなものをつく人が現れるのも想像できるが、有権者の判断も信じつつ、まずは十分に守られていない権利の行使方法を整備する必要を思う。

 

6.

まずはコミュニケーション、情報伝達で未整備なところを対応して、相互の意思疎通を確かにしたい。

 

 

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